フレーバーが作るシナリオ

デモンパラサイトダブルクロスしかり、似てる!と評されるシステムは数多くあるわけで。
今回とりあげるのは、最近巷で話題になっているアルシャードガイア…と、似ているともっぱらの評判のナイトウィザードです。

アルシャードガイアの発売当初、FEARの公式Webラジオで製作者本人が「ナイトウィザードで培ったノウハウを活かした」と発言していただけあって、アルシャードガイアナイトウィザードの影響を強く受けた“後継作”とも言える作品に仕上がっています。
私の身内、知り合いからもナイトウィザードに近い、むしろ世界観はほとんど同じだ…という意見が多発しておりました。
では、本当にそうか?と思い、試してみました。何をしたかといえば、今までナイトウィザードで作ったシナリオをアルシャードガイアにコンバートできるかどうかを確認してみたのです。

結果から言うと、私には不可能でした。
シナリオ次第で出来る人は出来るのでしょうが、少なくとも私のシナリオでは無理。
それは何故か、と言えば似ている似ていると言われていた世界観が違い過ぎるためです。
お互いに現代ファンタジー、現代に剣と魔法を持ち込んでいる、世界の常識としては魔法の存在は隠されている、補助組織の存在などなど…確かに設定は似通っています。
それなのに同じシナリオが再現できないのは何故か…といえば、もっと狭い分野での単語、設定が大きく違っているからです。

例えば、私が昔書いた「今宵咲ク真紅」というシナリオでは、双子の人造人間が、自分を作った研究者が死んでしまった所為で正しい指示を受け取ることが出来ずに暴走するという話でした。
無限回廊」では、魔王の力を秘めて転生し続ける主人公が、同じく転生し続ける二人のヒロインの間で揺れる…という話でした。
共通項として、用意されているキャラクタークラスに依存したシナリオ作りをしている、というポイントがあります。

アルシャードガイアでは人造生命を保証するルール、キャラクタークラスはありませんし、魔王の力を宿した主人公はダンピールで再現できますが、転生前の記憶なんかに関しては再現できません。
強いて言うなればレジェンドなのでしょうが、レジェンドのクラス説明には「これから伝説を残すもの」であって、過去の伝説の存在と言うわけではありません。
その辺りを踏まえれば、私の作ったシナリオはナイトウィザードらしい、アルシャードガイアで再現するには向かないシナリオと言えるでしょう。

だからナイトウィザードのほうが優れてる!とか言う気は欠片もなくて。
むしろシステムとしての完成度は圧倒的にアルシャードガイアの方が高まっていると思います。
ここで言いたいのは、現代ファンタジーだとかそんなにおおまかな分野で似ていたとしても、システムで再現されるキャラクターによって作れるシナリオも大幅に変わる、ということで。
転生者や人造人間をネタにしたシナリオがナイトウィザードで作れるように、ダンピールやフォックステイル、オーヴァーランダーをネタにしたシナリオは……あれ?ダンピールはまだしもフォックステイルは人狼で、オーヴァーランダーはV3対応で再現できる?…いや、V3まで使わないと無理なのだと納得しておきましょう。

デモンパラサイトダブルクロスと同じだ、と叫ばれていた頃も思ったのですが、そのシステムで生み出されるPCはどんな人物かとか、そういったフレーバーとして処理される部分をシナリオライターが上手く処理をすれば、そのシステムらしいシナリオ、そのシステムでしか再現できないシナリオと言うのは少なからず出来るのではないかと。
TRPGが未だに新商品を出し続けているのは、今までのシステムでは遊べない世界観を遊べるようにしてくれるから、というのが一番の理由だと信じ続けているので。
ガープスAの魔法陣なんかの汎用システムと呼ばれるジャンルでは少し意味合いが違ってくるわけですが。

キャラクタークラスやスキル説明など、ゲームとしてはフレーバー的な要素しかないように見える部分こそ、シナリオネタに取り入れることに意味があるのではないか……というお話でした。