コンフリクト

「ゲームでも小説でも、重要な作劇術はいかにコンフリクト(対立)を盛り込むかである。
 ロールプレイングゲームでは、他のゲームでは盛り込めなかった心の葛藤というコンフリクトを容易く表現できる」

鈴木銀一郎先生の著書、ゲーム的人生論にはこんなことが書かれています。
私個人としては、この意見にとても共感します。

個人的な好みとして、私は「見たことも無い斬新なストーリー」よりも、「ありがちで先が読める短絡的なものだけどキャラクターが生き生きとしてるストーリー」の方が好きです。
というのも、ストーリーが想像できないと、ストーリーを追っていくだけで疲れてしまい、二度、三度と読まないとその作品の本当に見せたい部分、本質が読み取れないような気がするからです。
なので、シナリオを作る際も、比較的ありがちな、使い古されたパターンを使うことで展開を想像させ、その中でどんなキャラクターで何を選ぶのか…というスタイルの場合が多いです。

で、ありがちな展開としてもっとも容易く、使い古された、そして未だに有効な「コンフリクト」の材料…それは「恋愛」と「死」。
ものすごーく短絡的で、簡単で、だけどぶつければPC達はそれなりに悩んでくれます。
ただ…確かに悩んでくれるのだけど、それは心の葛藤とはなにやら違うご様子。

たとえば、主要NPCの命と世界の危機、どちらをとるのか…もう、全力でお約束ですね。
パターンとしては、「NPCの犠牲によって世界が救われる」「NPCを救おうとした正しき心のおかげで奇跡が起こって世界が救われる」「どっちかが犠牲になるなんて間違ってる!両方とも俺たちが救ってみせる!」とか、そんな感じにいろいろあるんですが…「NPCを救ってしまった所為で世界崩壊」ってネタ、見たことあります?
少なくとも私は見たことがないし、あったとしても、メジャーではないでしょう。

そうなると、PLの思考はこうです。
「どうやったら世界もNPCも救えるのか。NPCを犠牲にするのは最後の手段で、その選択をしてしまったら負けだ」

確かに悩んでる…悩んでるけど、それは、心の葛藤とかそういうものとは、少し違う。
多分ここが、私がGMとして今一歩成長できてない壁なんだろうな…と。

使い古されたネタを活用するってことは結局、解法が(唯一絶対とは言わないまでも)既知であるわけで、どうしても「お約束」としてその解法に行き着いてもらうことを考慮に入れてしまう。
欲張りな選択に見えても、案外それが強引に叶えられてしまったりするようなシステムを中心に今まで遊んできたと言うのも、要因の中の一つかも。

最近、やっとローズトゥロードのサプリメント「ザ・ストレンジソング」を手に入れまして、小林先生の書いたリプレイとシナリオを読んで、なんというか、TRPGの一参加者としてどうだかは置いておいても、作家としては足元にも及んでいないと言うのを再確認してしまった次第です。
あの人の作品は、本当に絶妙なところで考えさせられる。

余談ですが、私が小学生くらいの時にやっていた、テレビアニメ版「ヤマトタケル」は、子供心に凄い衝撃でした。
「伝説の剣か仲間の命かどちらかを選べ」という問いに「仲間の命」を選んでしまった主人公の所為で、伝説の剣は見事に敵の手に…
そこは「正しい心の持ち主こそ剣の所有者に相応しい」とか言う場面ではないのかと。
(ほぼ同時期?にやっていた「YAIBA」では、同じ問いかけで同じ選択をし、竜の玉は見事主人公の手におさめられていた)